ondo online store

カートを見る
  • SHOPPING GUIDE
  • ログイン
  • JAPANESE
  • ENGLISH
美術作家・大槻香奈が4年越しに語る、個展『乳白の街』

美術作家・大槻香奈が4年越しに語る、個展『乳白の街』

 

 

「自分の意思や表現したいことが伝わる文章(ステートメント)を書かなきゃって思ったんです。」

―大槻さんはほぼ毎年大規模な個展を開催し、おびただしい数の作品を発表していますが、どうやって制作を進めているんですか。

  

大槻:最初は漠然とした感覚から時間をかけて描き進めて、全体の半分くらい描けたら、作品を言葉(ステートメント)にしていくんです。そうするとテーマが自分の中で明確になるので、残り半分の作品はテーマを意識的しながら描いていきます。でも、このやり方で描くようになったのは、2011年に開催した個展『乳白の街』からなんです。それまでの作品は全て無意識を探る作業だけで描いていたので、本当にしんどかったですね。体力も精神力も消耗してしまうから、このままだと20代のうちに死んじゃうって思ってました(笑)。

 

―(笑)。では、意識的に制作スタイルを変えていった感じすか。

 

大槻:震災(東日本大震災)が私を変えたんですよね。それまでは作家として作品が売れるようになって、好きな絵を描いていけたらいいって、なんとなく思っていました。そんな時にあの震災があって、何もできない自分を目の当たりにしたんです。美術作家で活躍されている人は作品をオークションにかけて募金をしたり、またミュージシャンの方だったら現地でパォーマンスしたり、自分の作品を使って具体的な形で支援されていたんですよね。もちろも作品はすべて全力で描いているんですが、作家としてこれまで社会に影響を与えてきたのだろうかって考えてみたら、ぜんぜん与えてなくて。それって社会の中で生きていないってことだと思ったんですよね。自分のために身を削ってきたんだなって。

 

―それに気づいてからすぐに制作方法を変えていく方向にシフトされたんですか。

  

 大槻:震災直後の4月1日から始まる東京の「行商」というアートフェアへの出展が決まっていたんです。まだ美術作品なんて観ている場合じゃない空気だったにも関わらず、私の参加するイベントは奇跡的に開催されて。これは何がなんでも絵を使って支援をしようという気持ちで、テーマ性を持って作品を発表したんです。そしたらお客さんの反応がこれまでとは全く違ったんですよ。すごく前向きに捉えてくださる方が多くて、「元気をもらった!」って言ってくださって。やっぱりこういうことをしないとダメだって思いました。そのときすでに『乳白の街』の開催が決まっていたので、これは自分の意思や表現したいことを伝える文章(ステートメント)を書かなきゃって思ったんですよね。

 

IMG_5308―文章をちゃんと書こうと思ったっていうのが大槻さんらしいですよね。でも、文章を書くことは、絵を描くことと全く違いますよね。

 

大槻:それ以前に文章を書いてこなかったので、死ぬほど時間がかかりました。最後は泣きながらやりましたね(笑)。でもここでちゃんと文章を書けないと多分この先何をやってもダメだって思って。作品制作を遅らせてでも、ステートメントを書く時間にあてていました。振り返ると自分でも頑張って書いたなって思いますし、今読み返してみても過去のいろんなステートメントの中で、一番緊張感が伝わってくるんですよね。

 

―緊張感もそうですし、希望を見出そうとする大槻さんの姿勢が伝わってきましたね。 

 

大槻:でも今の自分にあのステートメントはもう書けないんですよ。この時初めて書いたっていうのと、震災直後っていう状況もあって。火事場の馬鹿力じゃないけど、自分でもどこからこんな力が出たのかなぁって。それと初めて無意識で描いた作品を言葉にできたんですよね。そういう意味でも、私にとって『乳白の街』が美術作家としてのスタートだった思います。

 

―届けたい相手が明確だったからこそ、あのステートメントが書けたというのもあるんじゃないですか。

 

 大槻:そうですね。私は京都にいたので震災は経験していないから、外側から想像することしかできないのが一番苦しくて。被災者の方の気持ちに寄り添うことはできたとしても、私にできることは何だろうって考えた時に、今の日本の状況を絵にすることなのかなって。

 

作品は答えを投げかけるのではなく、問いだけを投げかけている。

IMG_5367―個展から4年が経ちますが、大槻さんの自身もいろんな変化があったと思うんですよね。例えば『乳白の街』のステートメントにはSNSに対して感じた希望について書かれていたと思うんですが、今も同じ気持ちなのか、とか。

 

大槻:正直、希望は感じていないですね。今となっては日常の中に溶け込んでいるものなので、当たり前の存在というか。11月から始まる個展『わたしを忘れないで。』のステートメントに書いたんですが、あの時希望を語りすぎた故に、取りこぼしたことがあるんじゃないかなって思っていて。だから次の個展は希望を語らないっていうのがテーマなんですよね。

 

―今、希望を感じるものってありますか。

 

大槻:無いですね。今は個人レベルの幸せしかない時代になってきていますよね。東京オリンピックが希望になるかというと、また違うと思いますし。私も今は身近な小さな幸せのために頑張っていますね。何か大きなものを作って、多くの人をコントロールしようという考えにはならないというか。

 

―大槻さんの話を聞いていると、社会に対しても自分に対しても引いた見方をされていて、面白いなって思うんですよね。

 

大槻:そうかもしれないですね。これはさっき言ったこととは真逆になるかもしれないですけど、実は身近な幸せほど一番どうにもならないものって思っているんですよね。家族のこととか、仕事のこととか。目の前の問題が一番難しいことなんですよ。身近なことがうまくいかないことが続くと、頑張っても仕方ないから、漠然とした社会とか世界をどうにかしたいっていう思いが芽生えてくるんですよね。

 

―身近なことをうまく進めるために、社会のことを考えるということですか。

 

IMG_5343大槻:身近に抱えている問題って、多くの人は自分の意識や気持ちの持ちようで変えていけると思っていますよね。それはある意味正しいと思うんですけど、私は正しいとは思っていなくて。例えば、私がわがままで怒っているややこしい人だとしたら、それは自分のせいではなくて、何かの影響でそうなっているから、外に目を向けるということです。だから、環境を変えることで原因が見えてくると思っています。そういうことを考えていると、社会問題につながっていくんですよね。自分の意識じゃない部分について考えて、解決を見出していくっていう感じで。

 

 

―なるほど。そういう考え方をしたことがなかったのですごく新鮮です。

 

大槻:だから私の作品は答えを投げかけるのではなく、問いだけをなげかけているんです。お客さんの日々の生活にノイズを吹き込む感覚で書いていますね。考えるきっかけや気づきが大きなテーマの一つと言えます。

 

「個展の名前を言ってくださる方って、何かその個展で得たものあったんだろうなって。」

 

―これまで作品集などを出していない大槻さんが、アーカイブを作ろうと思った経緯をお聞きしてもいいですか。

 

DSC_0004DSC_0015DSC_0018

大槻:私はこれまで個展で発表することは頑張ってきたんですけど、それを記録して、残すっていうことを頑張ってこなかったんです。それはあえて残さないっていう方針でもあって、20代の時は先に進みたかったので、振り返りたくなかったというのがあります。ファンの方からは手元に置ける画集がほしい、グッズがほしいと言ってくださっていたんですが、なるべく作らないようにしてきました。

 

―個展に全力を出し切っていますもんね。

 

大槻:個展に来ないともう観られないよっていうスタンスですね。画集を真っ先に買って、観たつもりになっていただいても私はあんまり嬉しくないんですよ。やはり空間を見てもらわないと、私の表現したいことはぜったい伝わらないと思っていて。例え交通費が往復5万円かかるとしても、入場料5万円払ってでも観る価値のある個展にしますっていうのを、Twitterにアップするくらいの覚悟で毎回やっているので。

 

―そんな大槻さんが今回アーカイブを作る気持ちなったのは、何か心境の変化があったんですか。

 

大槻:もうそろそろ振り返ってもいいんじゃないかって思いはじめたんですよね。『乳白の街』を機に、コンセプトをたてて制作したので、それを形にして残していくことが、今後は大事になってくると思ったんです。個展のアーカイブを作っていきたいとondoさんに相談をしたら、ぜひ一緒にやりましょうという流れになって。

 

―それは過去の代表的な作品を掲載するというのではなく、一つの個展に絞りたかったですか。

 

大槻:そうですね。ただ作品を並べてあるものは私の作品の本質じゃないですからね。個展ごとに意味があるので、なぜこの作品が展示されていたのかっていうのが重要で。しかもどういう順番で配置されていたのかっていうのもテーマに繋がるものなので、アーカイブでも作品は展示した順番に並んでいます。

 

―実際に『乳白の街』へ足を運ばれた方も、展示を振り返られるものになりますね。 

 

大槻:そこはすごく意識しましたね。今でもあの時の個展は良かったって言ってくださるんですよね。しかも『乳白の街』

良かったって。個展の名前を言ってくださる方って、何かその個展で得たものあったんだろうなって私は思っていて。だからこそ、個展ごとのくくりにしたいんですよね。今後は定期的に出していきたいと思っています。

 

乳白の街_re

  

_DSC7322

_DSC7183

 

 

 

 ―次の個展『わたしを忘れないで。』で初めて大槻さんを見られる方にもアーカイブは手にとってほしいものですか。

 

大槻:そうですね。時代も変わっていますから、ステートメントを照らし合わせて読んでいただくと面白いと思いますね。今回の個展『わたしを忘れないで。』で『乳白の街』のアーカイブを販売するので、アーカイブを見ることで私の変化が伝わるんじゃないかなって思います。今の作品が好きっていってくださるファンの方にも、今回のアーカイブはぜひ手にとってほしいですね。

  

  

  

  

  

main-598x500

 

  

  

  

 

  

  

  

  

  

大槻香奈アーカイブ vol.01 「乳白の街」 / 大槻香奈

【ondo online storeにて11.25(火)より販売開始→http://store.ondo-info.net/items/artist/ohtsukikana/1384/

価 格:¥4,300(税抜)

サイズ:A5判(148×210㎜)

仕 様:96頁/コデックス装/スリーブケース付

発 行:2015年11月3日発行

備 考:1000部限定

著 者:大槻香奈

発行者:池田 敦(G_GRAPHICS INC.)

ブックデザイン:阪口玄信(G_GRAPHICS INC.)

発 行:ondo

ootsukikana

  

 

  

  

  

  

  

大槻香奈個展「わたしを忘れないで。」

2015.11.3(火)-11.29(日)

11:00-20:00

※11月9日、11月16日、11月23日 月曜休館 ※最終日は18:00 まで

@The Artcomplex Center of Tokyo /アートコンプレックスセンター

〒160-0015 東京都新宿区大京町12-9 B1F artcomplexhall

TEL/FAX:03-3341-3253 (2F のギャラリー直通)

E-mail:info@gallerycomplex.com

web site:http://www.gallerycomplex.co

  • ondo gallery&product