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特集|大槻香奈インタビューvol.2

特集|大槻香奈インタビューvol.2

  

  

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個展『みんなからのなか』を振り返っていただきたいのですが、蛹をテーマにした背景を教えてもらっていいですか。

大槻:小説や映画で未成熟な少女を蛹に例えることはよくある表現なので、結びつきやすいテーマではあるんですよね。確かにそういう見方もできるのですが、私が表現したかったのはそうではなくて。『乳白の街』のときに時代に対しての希望を表現したからには、いろんな責任をとっていきたいという思いがありました。問題定義だけをして、あとは自分の好きなように絵を描いていたらアーティストとして逃げだなって。せっかく『乳白の街』で表現したことが無になるので、次の展示はアップデートしたものにしたい、それは自分の「知」によって構築したいと思いました。

 

「知」というのは、物事を見抜く力や、理解する能力のことですよね。

大槻:そうです。震災があった直後、とりあえずみんな傷ついている状況をなんとかしたいという思いから、希望を抱ける作品を描いた。でも、そこから具体的に自分たちは変わっていきたいのだけれど、どんな風に変わっていけばいいのかが分からなくなっている人たちを目の当たりにしたんです。社会を変えることにつながるのかは分からないけれど、自分の「知」で生まれ変わる表現を構築する意識がすごく大事だと思いました。それを自然現象としての「蛹=少女」のモチーフを使いながら、青虫が蛹になるくらいの意識の変わり方を表現できないかと。それくらい強い意思を持っていないと、社会を変えられないと思ったんです。みんな生まれ変わるイメージが持てないので、自然現象から形を借りて、自分なりの理屈によるメカニズムによって構築していく。その過程を一つの展示にできたらいいなと思いました。

 

実際にお客さんからの反応はいかがでしたか。

大槻:『乳白の街』は自分で一から個展の企画や、ステートメントを書くといった、これまでサボってきたところを一気に解消した展示でした。何もかもが初めてすぎて、振り返ると展示としては稚拙なところもあったと思っています。エネルギーはすごくあるけれど、初心者っぽさみたいなのが出てしまったというか。展示をたくさん観られているコレクターさんからは、要素がありすぎる、消化できないなどの意見もありました。でも『みんなからのなか』は成長を描いているけれど、蛹になろうということしか描いていなくて、蝶になろうとは描いていないんですよね。シンプルでテーマもわかりやすいという部分もあって、昨年より良かったと評価してくださる方が多く、自分でも手応えは感じました。自信にもつながりましたし、自分の成長を実感できた展示でしたね。

  

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『みんなからのなか』で蝶を描かなかったのはどうしてですか。

大槻:そこは描けなかったんですよ。蝶まで描いてしまうと、また別の話になってしまう。今もそういうところはあるのですが、私たちは変わろうとする意思を持てない臆病さみたいなものを持っていて、まずはそこをしっかり認識してほしかった。みんなが蛹になる意思をしっかり持つことが大事だと思ったんです。

  

 

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個展『生の断面/死の断片』では、少女モチーフを卒業し、作品の新たなモチーフが家と聞いて正直驚きました。いつ頃から少女モチーフを卒業したいと思っていたのですか。

大槻:2011年の『乳白の街』くらいからですね。2007年にデビューをした時は、まずとっつきやすい、人が入っていきやすいモチーフでという理由で、あえて少女を描いていた部分もありました。日本は少女文化が盛り上がるので、ある程度いろんな人に知ってもらいたいというのと、日本の幼いものを愛してしまう違和感に気づいてもらえるまで、少女を描き続けないと自分は振り向いてもらえないと思ったんです。日本人は未成熟なものを愛でていると安心する人が多いと感じていて、成長をせずそのままの存在であって欲しいと思っている。本来成長してくことは楽しいし、嬉しいこと。少女である前に一人の人間なので、無意識のうちに成長したいという私の意思が、少女の目つきの鋭さに現れたていたんだと思います。

 

少女モチーフでの表現はやりきった感じですね。

大槻:少女から大人へのアップデートは結構時間がかかりましたね。今年ようやくデビューして10年。さすがに10年やると自分のものになるから、少女モチーフはもういいだろうと踏ん切りがついたのが正直なところです。だからこそ別のテーマにいけたというのはありますね。

  

「家」モチーフを描くにいたる経緯をお聞きしてもいいですか。

大槻:今年の1月に五反田にある「カオス*ラウンジ五反田アトリエ」で、家がテーマの展示を初めてやらせていただいたんです。そこはカオス*ラウンジ現代美術作家のチームが運営しているアトリエで、メンバーである美術評論家の黒瀬陽平さんからお声掛けいただき、少女以外のモチーフで展示をやってほしいと依頼がありました。私としても少女モチーフを卒業したかったのでいいタイミングで。黒瀬さんと展示にまつわる話をしていくうちに、家を描いてみたいと私の口から出たんですよね。今まで少女を描いていたけれど、少女について考えていたわけではなかったので、別のものに置き換えるなら家かなって。

  

「少女」を「家」に置き換える、共通点はどこに見出していますか。

大槻:形が持っているイメージや概念、世の中のあり方は違いますし、人間と人間じゃないものではあるのですが、私の中では違和感なく一緒なんです。成長するイメージに紐づけると、家も生かそうとする努力をしないと死に近付いてしまう、危ういものだと思っていて。人間と近しいものだと感じます。生き物じゃないから、自然に成長はしないけれど、時代の価値観によって家の価値観も変わるし、自分が変わったら家の中も変わる。そういう成長という視点で置き換えている感じですね。少女や蛹をテーマに扱っているときよりも、家のほうが考えることが多いんです。

  

家はみんなにとって必要で、身近なものなので、視点もいろいろありそうです。

大槻:自分の住むお家だけでなく、学校や会社も家に例えられるし、国家も家だと思うんです。家は人間の「知」が関わっているものなので、生かそうとし続けないと死んでしまう。だから私は住む家、学校、会社、国家など、家に象徴されるなにかに対して、私がどうやって育てていくかの視点を立てることが重要だと思っているんです。それは私が大人になることでもあります。それに家はテーマが広いから、表現方法も増えていますね。それも大人としての役割の一つなのかなって。そういう部分を自分が背負うことになったのだと思うとちょっと嬉しいです。ようやく楽しくなってきた感じですね。少女は家の中で守られている存在で、今まではその視点からでしか何かを主張する事が出来なかったのだけど。家をつくっている人、家をつくろうとしている人の視点でものをつくれる。それが本当によかったと思っています。

  

『みんなからのなか』の「から」と新たなモチーフの「家」は紐付いていますか。

大槻:紐付いていますね。「蛹=少女」と一緒で、単に自然現象として捉えるのではなくて、どういったメカニズムで家という概念が出来上がっているのか、新たな「知」の構造のために、解体しようと思って取り上げています。私たちは普段ものを見るとき、世間の空気とか時代の流れによって作られたイメージをみていると思うんです。美術作家の役割のひとつは、そうやって素朴に受け止めてしまっているイメージを解体・再構築してみせる事だと思っていて。例えば蛹だと、中でどうやって青虫が蛹になっていくのかメカニズムが気になるわけですけど、昔ドイツの生物学者が蛹を割って色んな研究していたように、好奇心を持って、自分が信じていたものを一度バラバラにしてみる。それってちょっと怖いことだと思うんですけど、そうすることで思いもしなかった新たな「知」が生まれるんですよね。そういうことを大事にしていたい。美術作家としてというよりかは私自身が、生きる事に対して前のめりでいたいというか。

 

  

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大槻さんが大人になったということは、蛹から蝶になったという表現になりますか。

大槻:そうですね。今年に入ってから蝶になったという実感があるかもしれないです(笑)『みんなからのなか』のときは蛹になるのが精一杯だったというか。蛹は蝶を生むための卵みたいなものなんですけど、最初、卵から生まれて青虫になったのに、もう一度生まれ変わるために卵に戻っていく。ドロドロに溶かして、何も無い状態からやりなおす…と考えると、成長するとはどういうことなのかイメージがしやすくて。『みんなからのなか』は時代に向けてつくったものではあるのですが、自分自身が成長をしたくて出てきたテーマだと思いますね。あそこがスタートで、自分自身が変わりたいという思いがあって、今につながっていると思います。

  

大人になった実感を持ちながら作品をつくるときに、自分が変わったと思う部分はどういうところですか。

大槻:作品に対しての向き合い方が変わりました。自分のことについて描くのではなくて、自分の周りの人たちや他人について描くようになったのが大きな違いとしてあります。今回の『生の断面/死の断片』ではそれを感じてもらえると思うので、そのタイミングで蛹だった自分がつくった『みんなからのなか』のアーカイブと、今年から私がやろうとしていることを見比べてもらえると、より成長のイメージが伝わるという気がしているので、すごくいいタイミングだといます。

  

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最後に、展示とアーカイブを並行して見るおすすめのポイントを教えてください。

大槻:『みんなからのなか』は蛹になろうとする展示で、『生の断面/死の断片』は蛹の抜け殻と蝶を表現した展示になっています。その中には少女モチーフの作品もあります。それは今までとは違う立ち位置のものとして展示で表現しているので、ぜひ観ていただきたいですね。アーカイブを買って、エッセイを読んでくださったうえで、今回の展示を観てくださると、少女の変化が分かると思います。

  

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大槻香奈アーカイブ vol.02 「みんなからのなか」 / 大槻香奈

【ondo online storeにて11.24(金)より販売開始→http://store.ondo-info.net/items/artist/ohtsukikana/7140/

価 格:¥4,500(税抜)

サイズ:B5変形判(182×245㎜)

仕 様:144頁/並製本/カバー・帯付[初回300部限定の特別パッケージ仕様]

発 行:2017年11月3日発行

部 数:1000部

著 者:大槻香奈 発

行者:池田 敦(G_GRAPHICS INC.)

ブックデザイン:阪口玄信(G_GRAPHICS INC.)

発 行:ondo

  

 

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大槻香奈個展「生の断面/死の断片」

2017.11.3(金)-12.3(日) 11:00-20:00 ※月曜休館

@The Artcomplex Center of Tokyo /アートコンプレックスセンター

〒160-0015 東京都新宿区大京町12-9 B1F artcomplexhall

TEL/FAX:03-3341-3253 (2F のギャラリー直通)

E-mail:info@gallerycomplex.com

web site:http://www.gallerycomplex.com

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